眼内レンズとは

白内障手術は現在も進歩を続けています。最新の白内障手術ではここ数年の間で、
遠近両用の眼内レンズ(多焦点眼内レンズ)が登場し、その治療をうけている患者様が全国で増えています。


当院では

多焦点眼内レンズを使用した白内障手術を導入し、
大分市で最初の多焦点眼内レンズを用いた白内障手術に関しての先進医療認定施設となりました。(多焦点レンズを用いた先進医療は令和2年4月より「選定療養」と形が変わりました。>>選定療養についてはこちら

『単焦点眼内レンズ』、『多焦点眼内レンズ』のどちらも選択可能ですが、『多焦点眼内レンズ』の場合は選定療養(レンズ代は自費)となります。

※選定療養の場合でも『多焦点眼内レンズ』の手術以外の検査料などは通常の健康保険が適応されますのでご安心下さい。

ご確認下さい

患者様個人で加入されている医療保険の給付内容や条件を事前にご確認ください。(入院なしでも給付される、入院でないと給付されない、日帰り入院でも給付される...etc)
これまでの「先進医療特約」は選定療養では使用できませんのでご注意ください。

眼内レンズの種類

単焦点レンズとは

白内障の手術の際に使用する人工のレンズで、従来からあるものです。

日本でも40年程前から使用されています。その名前の通り、「焦点が1か所に合う」レンズとなり、手術を受ける前に、術後の焦点の合う位置を「遠く」「近く」などに決める必要があります。

例えば、「遠く」に焦点を合わせた場合は、車の運転や数メートル先のテレビの細かい部分も見えやすくなります。

ただし、逆に新聞や時計、スマートフォンの文字、編み物などの手元の周りが見えにくくなるためいわゆる老眼鏡が必要になります。

これに対して「近く」に焦点を合わせた場合は、目から30㎝~40㎝の距離が見えやすくなりますので、手元の周りがよく見えるようになる代わりに、日常の大部分は遠方が見える眼鏡をかけたままでの生活が必要となります。

このように、単焦点レンズは焦点が合っている距離では非常にクッキリとよく見えますが、それ以外の距離では眼鏡を必要とする事が多く、白内障手術を受けられた方の9割程度は眼鏡を日常的に使用しているのが現状です。

ただ、従来から使用しているレンズのため非常に実績は豊富です。眼鏡の使用に抵抗がない方にはよい適応と考えられますが、多焦点レンズと比べると眼鏡の使用頻度は明らかな差があるため、眼鏡をできるだけ使用したくない方は多焦点レンズも含めて検討することをお勧め致します。

多焦点レンズとは

単焦点レンズと同じように白内障手術の際に使用します。

単焦点レンズが眼鏡の使用がほぼ前提となるレンズのため、眼鏡の使用率を低くする方法が従来から試みられてきた中で誕生したレンズです。

単焦点レンズと比べ焦点の合う数が複数あるため、「遠く」「中間」「近く」と広い距離に焦点が合い、眼鏡の依存度を減らすことができることが最大のメリットになります。近年は多焦点レンズの研究が進んでおり、10年前と比べるとより性能のよいレンズが増えています。

実際に、当院での実績はもちろん、様々な学会報告や論文での報告を見ても単焦点レンズとの比較では、眼鏡の使用頻度に関してはかなりの差があり、多焦点レンズが勝っている事がわかっています。眼鏡を使わない生活を送れるようになるメリットはとても大きく、運動、入浴、お化粧などの毎日の生活ではもちろんですが、災害時にも眼鏡やコンタクトレンズがなくて助かったという声も多数あるようです。

ただ、多焦点レンズといっても1種類ではなく、その構造の違いがあり見え方もレンズによって特徴があり、まだ全ての方が満足する完璧な見え方のレンズというものは存在しませんし、若い頃の見え方に戻るわけではありません。したがって、受けられる方の目の状態や、眼鏡の使用状態などを含めた生活のスタイルなどの問診を術前に受けて頂き、医師との相談の上、適正がある場合に最も適した多焦点眼内レンズを選んで使用しています。

このため、適正検査の結果によっては、多焦点眼内レンズを折角ご希望されても従来から使用されている単焦点レンズをお勧めする場合もございますのでどうかご了承下さい

眼内レンズ比較表

多焦点レンズ(選定療養)

費用 レンズ代(自費)+手術代(保険適用)
材質 アクリル樹脂
焦点 ピントが合う箇所が複数
特徴
  • 眼鏡の使用頻度がかなり減る。
  • レンズ代は自費で、手術や検査代は健康保険適用(1-3割負担)

多焦点レンズ(完全自由診療)

費用 完全自由診療
材質 アクリル樹脂
焦点 ピントが合う箇所が複数
特徴
  • 世界で広く使用されている最新の多焦点レンズを使用可能。
  • よりコントラストが高く、より自然な見え方のレンズを選択できる可能性が高い。

単焦点レンズ

費用 保険診療
材質 アクリル樹脂・シリコン
焦点 ピントが合う箇所が1箇所
特徴
  • ピントが合う距離が1ヶ所なので、ほとんどの場合メガネが必要。
  • 健康保険適用の白内障手術(1~3割負担)が受けられ、従来から行われているレンズの為、実績が非常に豊富。

タイプ別眼内レンズの見え方

  • 1単焦点眼内レンズ
  • 2多焦点眼内レンズ(2焦点タイプ):遠くと近く(30~40㎝)に焦点が合い中間距離はみえにくい
  • 3多焦点眼内レンズ(焦点拡張タイプ):遠くから中間距離(50~60㎝)までが見えやすく、手元はややみえにくい
  • 4多焦点眼内レンズ(3焦点タイプ):遠く、中間距離、近くにも焦点が合う

があります。

多焦点レンズの中では最近、コントラスト(焦点が合う部分のクッキリ見える程度)がより高い、「焦点拡張タイプ」や眼鏡の使用頻度が低い「3焦点タイプ」が主流になりつつあります。

患者様のライフスタイルに合った眼内レンズの選択をおすすめいたします。

  • リビングでのイメージ

    リビングでの見え方比較
  • 運転中のイメージ

    運転中での見え方の比較

取り扱い眼内レンズ一覧

名称 単焦点レンズ Pan Optics
パンオプティクス
Technis Symfony
テクニスシンフォニー
Technis MultiFocal
テクニスマルチ
形状
 光学部デザイン  単焦点レンズ  回折型(3焦点レンズ)  回折型(焦点拡張型レンズ)  回折型(2焦点レンズ)
コントラスト
(くっきりする程度)
◯〜◎
焦点 1つの焦点 3焦点 遠方〜中間にかけて
連続した焦点(集中拡張型)
2焦点
グレア・ハロー かなり少ない やや少ない
読書(近方) 合わせた距離:◎(最も良い)
それ以外の距離:△(~×)
△(~×)
PC(中間) 合わせた距離:◎(最も良い) それ以外の距離:△(~×) 〇~◎
ゴルフ(遠方) 合わせた距離:◎(最も良い) それ以外の距離:△(~×)
運転 合わせた距離:◎(最も良い) それ以外の距離:△(~×)
夜間のグレア・ハロー有り

夜間のグレア・ハロー有り 

夜間のグレア・ハロー有り 
特徴 従来からある眼内レンズ。全額保険適応で、コントラストが最も高い。ねらった距離以外をみる場合は眼鏡がほぼ必要になるが、眼鏡の使用に抵抗がなければ十分な見え方になります。 遠方か中間、近方までバランスよく見え、眼鏡が不要になる場面が最も増えるレンズです。ただし、乱視が強い方や網膜の病気がある方には不向きです。 コントラストが単焦点並みに高く遠方から中間距離までは途切れなく自然にみえるため、運転やパソコン重視の方に向いています。ただ、近方はやや見えにくく約半数の方は老眼鏡を必要とします。 遠方と近方が見えやすくなり、コストパフォーマンスが高いレンズですが、ややコントラストは低め。乱視が強い方には向いていません。

多焦点眼内レンズの注意点

見え方について

中間距離にはややピントが合いづらい為、若い頃の見え方とは異なります。
暗い所では、手元が少し見えづらく感じる事があります。手元を明るく照らす事で、見えやすくなります。

グレア・ハローとは

暗い所で、まぶしい光を見ると、光の周りに輪が見えたり(ハロー)、光がにじんで見えたり(グレア)する事がありますが、時間とともに症状は軽くなります。
術後の見え方に慣れるまでに少し時間のかかる方がいらっしゃいます。

軽度のグレアハロー
重度のグレアハロー

費用負担について

この治療は選定療養となります。手術術自体は保険外診療の為通常の単焦点レンズによる白内障手術に比べて負担額が高額となります。ただ、選定療養実施施設内での治療の場合、手術代以外の検査はすべて1割~3割の健康保険が適応される為患者様の負担軽減につながります。

その他

白内障以外に眼の病気がある患者様の場合、多焦点眼内レンズは使用出来ない場合があります。